- グッドニュース新聞編集部
「わたし」という素晴らしい存在
「長かったねぇ。疲れた?」
「 ばぁば、もうきてるかなぁ?」
新幹線が間もなく停車駅に着こうとしているときに、お母さんと、二歳にもならないくらいの小さな女の子が、扉の前で会話をしていました。
「みえなぁ〜い」そう女の子が言うと、お母さんは大きな荷物を持ったまま、女の子を抱っこしました。
新幹線は、駅に近づき、速度を落としはじめていました。
「もう、着くよ」
「つくね〜」
新幹線がゆっくり止まり、音楽とともに扉が開きました。すると、ホームには「ばぁば」とおぼしき人が立っていて、抱っこされていた女の子にとびつき、「よ〜ぉ〜来たね!」と何度も顔をすり寄せながら、うれしそうに抱きしめていました。愛おしいものを抱きしめるばぁばの顔からは、幸せがこぼれ続けていました。
その女の子はまだなんにもできません。抱っこしてもらったり、手を引いてもらったり、たくさんの人の力を借りないと生きてはいけません。だけど、なんにもできない女の子がただそこにいるだけで、こんなにも人を笑顔いっぱいにさせてしまうのです。
女の子が見せてくれたそれこそが、「わたし」たちのあるべき姿ではないでしょうか。
私たちは、だれかとつながり、いろんな人の力を借りて生きています。それにもかかわらず、ただそこにいるだけで、だれかを幸せな気持ちにさせてしまえる、そういうすごい存在なのです。
ばぁばは、そんな素晴らしい「わたし」を、素敵な素敵な「存在」を、めいっぱい愛おしく抱きしめていたのだと思います。
朝から、思わず微笑んでしまいました。
(滋賀県・講演家、作家・フカキヨ・44歳)
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