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  • グッドニュース新聞編集部

お母さんの背中を流してください

 それは、ある入社試験のことであった。

 第3次試験まで進んだAさんが、最終面接を受けることになった。ほぼ就職は確定していたので、リラックスしていたそうだ。

 そのとき社長から、「あなたはお母さんの背中を流したことがありますか」という質問をされた。予想外の質問に、Aさんは、「いいえ。一度もありません」と答えた。すると、社長からこう言われたらしい。

「では、今日の面接はこれで終わります。家に帰り、お母さんの背中を流してからまた面接をしましょう」

 Aさんは、母親ひとりの手で育てられた人である。早々、実家に帰り、母親にことの顛末を話した。そして背中を流させてくれと頼んだ。

 母親は、「背中は無理だが、では足でも洗ってもらおうかね」と言った。

 Aさんは、風呂場に行き、母親の足を洗った。母の足は、思ったよりずっと小さく、指の爪は長年の畑仕事でほとんどなくなっていたらしい。汗と湯気でAさんの顔は濡れていたが、いままで女手ひとつで苦労して育ててくれた母親の姿が思いだされ、涙が止まらなくなったという。感謝の気持ちがあふれ出てきて、母の小さな足を、ていねいに、ていねいに洗ったそうだ。

 この話を思いだすたびに、若くして亡くなった私の母の姿がまぶたに浮かぶ。そして、こんな素敵な会社に就職したいと思うのだった。


(東員町・畑友の夫・65歳)


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