
グッドニュース新聞編集部
つかの間の陽光(ひざし)をありがとう
「拝啓 昭和25年卒業立田小学校同窓生の皆さまへ
陣中お見舞い申し上げます/外出の折、同級生の顔が浮かび、皆さんとの遠い思い出をたぐり寄せては戯れにつづって懐かしんでいます/私の戯れに少し付き合ってください/今、皆さんのふるさと篠立、古田では云々――」
4月の初旬、世界中で自粛のムードが高まり、外出を控えていたころ、そうだ、今こんなときだからこそ、人と人が心をつなぐことはできないかと、70年の昔に同じ山の中の小学校を卒業した同級生全員に宛てて、彼ら彼女らとの思い出を手紙にしたためた。
小学校が廃校になったこと。地域おこしでみんなががんばっていること。そして一人一人の同級生に思い出をつづった。
生涯、頭から離れなかった学芸会での「仲よし小道」の遊戯をしたS子さん宛てには、10歳で初めて女性に心動いた幼き日の淡い思い出を。でも、そんなことは当のSさんをはじめ、同級生の誰もが知らない。
卒業写真を眺めながらつづり続けた、わくわくとした2日間であった。
その後、手紙を送ったほとんどの同級生から返事が来た。はがきが来た。電話がかかった。
「感動した、ありがとう」「故郷のことが目に映るようで、懐かしい」「毎日毎日、読み返しては懐かしんでおります」「コロナの自粛で暗い気持ちでの毎日の中、つかの間の陽光をもらった気分で元気になりました。文の中の雲外蒼天(うんがいそうてん)の言葉、好きです」――。
いっぱい、つながっているんだ。
淡い色つきの自粛生活の私でした。
(三重県・前田川了・82歳)