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  • グッドニュース新聞編集部

ハイハイレース

 先日、姉から動画が送られてきた。姪っ子が出場したハイハイレースの動画だった。

 私の姉は引っ込み思案で、運動が大嫌い。友人はいないに等しく、保育園の運動会では、走るのを拒否して一人で歩いていた。

 そんな姉の唯一の楽しみは、弟の私と遊ぶことだった。毎日毎日、布団に入るまでつきっきりで遊んだ。保育園で出された「わたしのたからもの」という課題では、「だいき」と私の名前を書くほどに愛してくれた。

 思いだすのは、一昨年の冬――。結婚した姉は、妊娠が発覚し、病院から母子手帳をもらっていた。仲の悪い母親とめずらしく和気あいあいと話す姿を、ゲームをしながら眺めていた。ところが病院から帰ってきた姉が、突然泣きくずれた。

 「赤ちゃん、死んじゃった」。開きっぱなしのゲーム機を置いて、私は、姉を抱きしめた。それしかできなかった。

 姉は、男性運に恵まれず、多くの女性が経験したくないことの大半を経験した。ストレスのあまり味覚がなくなってしまったこともある。そんなつらい経験を乗り越えて、ようやく素敵な男性とめぐり合い、誕生した命だった。

 外では雪が降っていたが、まだ名前もないまま逝ってしまった赤ちゃんを思うと、冬の寒さなど苦にはならなかった。

 今年の一月、姪っ子が生まれた。三日間におよぶ難産で、帝王切開に至る寸前だったが、ある瞬間に突然痛みがなくなったらしい。死後の世界がどうなっているかは知らないが、名前のないあの子がお母さんを助けてくれたのだと、私は勝手に信じている。

 先日、姉から送られてきたハイハイレースの動画を見返す。結果は断トツの最下位で、スタート位置から微動だにしていなかった。運動嫌いはしっかり遺伝しているようだった。


(千葉県・フリーター・Y-18・23歳)

                  

#Y-18

#創刊準備第4号

#きょうだい

#家族

#こども

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