- グッドニュース新聞編集部
乗り越えるべきもの
ごく最近、とある有名なセミナーに参加したときのことだ。
全国から参加者が集まるそのセミナーの名物イベントのひとつに、「火渡り」というものがある。
夜の闇のなかに煌々と浮かびあがる約10メートルほどの小径――そこには真っ赤に焼けた墨が敷きつめられている。参加者たちは裸足となり、そのたかが10メートル、されど10メートルの短くも長き道のりを、勇気を振りしぼって踏破するのだ。
初めの一歩を躊躇する者もいれば、怯えて泣いている者もいる。周囲のみんなは言葉のかぎりに声援を送り、みごと渡りきったあかつきには、得も言われぬ達成感に満たされることとなる。
参加者約300名が渡り終えたあとに、感想をシェアする時間があった。
ひとりの若者が手をあげて発言を始めた。「私は沖縄から来ました。燃えさかる火を見て、沖縄の心のシンボル、首里城が燃え落ちる姿とかさなってしまいました」
彼の目から涙が溢れはじめた。「でも、沖縄の人は心の底から明るい人たちばかりです。起きてしまったことは仕方ありませんし、元には戻りません。でも、私が火を渡りきれたように、沖縄のみんなも必ずこの喪失を乗り越えられるはずです」
会場のみんなからの温かい拍手と応援の声がいつまでも止まらなかった。
(東京都・会社員・ようさん・45歳)
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