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冬の思い出

 私は、冬の朝の「キーン」という寒さが好きだ。今年は、例年以上の暖冬で、「キーン」という寒さを感じたのは、本当に数えるほどだったような気がする。

 実は、「キーン」と感じるくらい寒くなるたび、思いだす「言葉」がある。

 当時、共働きで忙しい両親に代わって、学校に行く私をいつも見送ってくれていたのは同居していた80代の祖父だった。

 祖父は、毎朝私を起こし、朝ごはんや、時には特製サンドウィッチ(胡椒とチーズのトーストサンド!)をお弁当に持たせてくれた。暑い日も、雨の日も、雪の日も、どんなときでも家の前の道まで出て、私の姿が見えなくなるまで見送ってくれた。そんな祖父に、私は何度もふり返って手をふるのが日課だった。

 ある冬の朝――。

 家を出るとき、「寒いよー」という私に、祖父は、「あたりまえだよ、冬だから」と言った。

 次の日も、年が変わっても、「寒いよー」というと決まってこの言葉が返ってくる。祖父の「あたりまえだよ、冬だから」という言葉は、私の胸に奥深く根づいた。

 そして現在、私は、当時の私と同じ年頃の娘の母になった。

 冬になり、当時の私と同じように「寒いよー」と言う娘に、私はこたえる。

「あたりまえだよ、冬だから」と、祖父のことを思いながら。


(東京都・会社員・じゅっちゃん・36歳)


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