- グッドニュース新聞編集部
失いながらも、少しずつ前へ
2019年9月、約16年続いた三重県RDF(ゴミを乾燥させて固形燃料をつくる)発電事業が終了しました。ダイオキシンを出さず、捨てるゴミを燃料という資源に変え、発電することによりゴミ処理料金を賄うという「夢のゴミ処理方式」と謳われたシステムでした。しかし、現実はそう甘いものではなく、固形燃料製造とその処理とで二重に手間と経費がかかるものであることがわかりました。
さらに、追い打ちをかけたのが、稼働半年後に起きたRDF貯蔵施設の水蒸気爆発でした。この事故で2名の消防士の尊い命が奪われました。その内の1人が東員町在住の川島章さん(当時30歳)。前年に結婚し、彼が亡くなった3か月後に子どもが生まれました。
川島さんのご両親の心の内は、他人には推し量れるものではありませんが、大きな傷と暗闇が残ったことは疑いの余地もありません。
そんな川島さんの父親、浩さんは、どのように心の整理をされたのかわかりませんが、この事故後、事故の原因となった生ゴミを回収して堆肥にする活動を始めました。はじめは、なかなか賛同者が集まらない中、仲間とともに地道に活動を続けてきました。15年が過ぎ、今では500世帯ほどの生ゴミを回収、処理しています。
今、地球温暖化は大きな社会問題となっています。「燃やせばいいという風潮を消したい!」川島さんは、今日もゴミを集めて町内を回っています。
(三重県東員町長・水谷俊郎・67歳)