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奇跡の町づくり 〜阿下喜の女性アーティスト、はなもも

 阿下喜に春が、来た。ドーンと大迫力の22段800体以上の大雛壇(メイン会場のウッドヘッド三重)。周辺の商店街のいたるところが雛人形で埋めつくされている。この豪華絢爛な春の一大イベント「あげきのおひなさん」には、だれもが圧倒されてしまう(2月29日以降、新型コロナウイルスの影響で規模縮小)。

 このイベントは、単なる町の装飾という域を超えてしまっており、もはや壮大なるアートだ。

 開催期間は2週間余り。毎年この期間に、約1万5000もの人が阿下喜を訪れる(平成31年1月1日時点の阿下喜の総人口は2805人)。優良で模範的な観光のコンテンツとして、揺るぎない成功をおさめているのだ。

 ぜひ、多くの人に知ってほしい。このイベントの運営はすべて、純然たる地元のボランティア団体が行っているということを。完成度が高いから商業的に見えるが、業者はいっさい入っていない。

 大雛壇を組み、人形を飾りつけ、周知するに至るまで、すべて完全に手作業で地域の人たちがやりとげている。

 それが阿下喜の「はなもも会」のみなさんだ。メンバーは12人。夜な夜な集まり、3週間かけてこの大雛壇を仕上げる。ボランティア団体や地域グループというよりも、アーティストといったほうが正確だろう。

 結婚してこの土地に嫁ぎ、いつしか阿下喜での生活のほうが長くなったみなさんは、この町を愛し、来場者の方々に桃の節句をよろこんでもらいたいと心から願っている。全国津々浦々で、地域活性化のためにいろんなボランティアの取り組みが行われているが、この方たちほど成功している例を、私は知らない。

 今年、私はひな飾りの一部を初めて手伝った。はなもも会のみなさんの指導のもと、7段飾りを組み立てたのだが、緻密で根気のいる作業の連続で、すぐに音を上げた。そして、この作業にいっさいの見返りを求めず、地域につくそうと活動するみなさんの、心の美しさを感じとった。

 愛なのだ。あげきのおひなさんは、このひと言につきる。

 町づくりとは、どんなことをするかよりも、どれだけ地元を深く愛せるかがすべてだと、阿下喜の女性アーティストたちは教えてくれた。


(三重県・The Inabes・40代2人組)


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