
グッドニュース新聞編集部
弟なんてほしくない
私の甥のタカシ君は、小学校四年生。二歳上のお姉さんがいることもあって、甘えん坊です。ママが大好き、パパも大好き。お姉ちゃんとはときどきケンカもするけれど、やっぱり大好きです。すぐ近くにおじいちゃんとおばあちゃんの家もあって、毎日のように遊びに行きます。もちろん、ふたりのことも大好きです。
そんなタカシ君には、紳士な一面もあります。お父さんは忙しくて家にいることが少なく、ママとお姉ちゃんを守るのは自分の役目。洗濯物を干すときは、ママの下着が外から見えないように内側に並べる。みんなで買い物をした帰りには、いちばん重い袋を持つ。お姉ちゃんが新しい服を着ていたら、必ず褒める。アラフォーの私は、10歳児に「モテる男」の姿を学んでいます。
今年の一月、ママのお腹のなかに、新しい家族がいることがわかりました。お姉ちゃんはとてもうれしそう。「生まれてきたら私がオムツを変えるんだ」と張りきっています。タカシ君も、「絵本を読んであげる!」と楽しみにしていました。
家族みんなが待ちわびるなか、お腹のなかの子どもは順調に育ちました。そして、男の子であることがわかりました。
お姉ちゃんは、「どんな名前にしようか」と変わらずうれしそう。でも、なぜかタカシ君は不満そうです。「生まれてこなくてもいいよ」なんて言うこともありました。
なんでそんなことを言うんだろう。不思議に思ったけれど、想像もつきます。下にきょうだいが、それも自分とおなじ男の子が生まれれば、パパやママが取られちゃう。そう考えたのでしょう。やっぱり甘えん坊だね。大人たちはそう話していました。
でも、あんなに楽しみにしていたのに、とやっぱり気になって、私はタカシ君に内緒で聞きました。
「ねえ、なんで弟に生まれてきてほしくないの?」
彼は少し恥ずかしそうに答えました。
「先生に聞いたら、赤ちゃんを生むのって痛いんだって。ママがかわいそうだから……」
想像もしていなかった言葉。女性に対する姿勢をあらためて教えられました。
いま、タカシ君は毎日大笑いしながら弟のオムツを換えています。ウンチがクサいことがおもしろくてしかたないようです。
(埼玉県・会社員・滝丸浩久・37歳)