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  • グッドニュース新聞編集部

新鮮さに、心満たされて

 朝食後に四十分程度、ゆったりと地域を散歩することが、私の心満たされる源泉となっています。

 昨年、散歩の途中で、あるお二方との出会いがありました。八十代後半の老夫婦です。聴覚障がいのあるせいか、これまでは地域の方々と会話する機会があまりなかったそうですが、「おはようございます」と挨拶すると、大変よろこんだ表情をされて、ご挨拶が返ってきました。

 その後、この老夫婦とは、散歩のたびに出会うことが多くなり、しだいに話が通じ合うようになってきました。

 複雑なコミュニケーションもとれるようになってきたある日、老夫婦が大切に育てている大根と白菜が私の家に届きました。それは、私の胃と心を十分満たしてくれる素晴らしいものでした。

 別の出会いもありました。三十過ぎの無口な青年。こちらが挨拶をしても、何も返ってきません。負けずぎらいの私は、あきらめることなく、会うたびに何度も何度も挨拶をくり返しました。

 ところが、ある日のこと。いつものように挨拶をすると、「おはよう」という返事があったのです。はじめてその青年の声を聞くことができた。うれしかったです。でも、私以上によろこんだのは、その青年の父親でした。

「本当に、人と話ができない息子だったんだよ」

 散歩の路すがらの、たかが挨拶。されど、この挨拶が、人として当たり前の日常を体感させ、心を満たしてくれる。毎日を新鮮なものにしてくれる。そういう素敵なものであることに、私は幸せを感じています。

 立春の朝、梅の開花を数え、「過疎の邨(むら)に春が来る」と一緒に大笑いしたあの老夫婦の顔に、朝日がまぶしく映えていました。


(三重県・前田川了・81歳)


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