
グッドニュース新聞編集部
旅と、お酒と バリ編
ジャカルタを首都に持つインドネシアには有名な観光地がある――バリ島だ。
海と夕日がとてもきれいで、ガムラン楽器の音色もすばらしく、癒され、幸せな気持ちになれる。
ジャカルタなど他の地域では、イスラム教徒が8割を越えるらしく、なかなか表立ってお酒は飲めない。だが、観光地であるバリ島では、いつでもどこでも飲むことができる。
そんなバリ島に、数年前、LCCで5泊7日の旅をしたときのことだ。
最終日に少しだけ良いホテルへと、プールつきのヴィラで宿泊。とても素敵な場所で、昼過ぎに海へと出かけようとした際、どうしても座りたいカウンターを見つけた。さっそくバリニーズのスタッフにオススメのドリンクをつくってもらい、「これはなんていうカクテル?」と尋ねた。
「ライチマティーニですよ」。ふっくらとして日に焼けた男の子がニコニコと教えてくれた。歳は20代半ばほどだろうか。私自身、酒類の仕事にたずさわっており、個人的にも嗜むので、カクテルをつくる手もとをしっかりと確認する。
ライチのリキュールは使っていないことが見てとれた。とても美味しく、リキュールなどにはない、フレッシュで甘い香りがした。
「すごくライチの香りがいいね」
「これを使ったんです」彼が差しだしたのは、ライチの缶づめだった。つまり彼は、リキュールのかわりに缶づめのシロップを用いたのだ。
私はそこで、あるストーリーを思いだした。ノーベル賞を獲ったケニア人の方が、来日した際に〝もったいない〞という日本語を知って感銘を受けたのだとか。
「日本人はよくもったいないという言葉を口にします。これはひと言で、お金、時間、労力、資源などを無駄にしてはいけない、という素晴らしい教えです。けれども、私たちは缶づめのシロップは捨ててしまっている。それはすごく〝もったいない〞よね。あなたのおかげでこの言葉の本当の意味を考えさせられました。ありがとう」。そんな話をした……はずだ。つたない英語ではあったけれど。
(東員町・Wine@憩 ソムリエール・山口亜矢・37歳)