検索
  • グッドニュース新聞編集部

春の手仕事

 家の歳時記はいろいろとあるけれど、桜の塩漬けもそのうちのひとつ。父が毎年つくってくれる梅干しなど、私が大人になったいまでも、いただくことが親孝行とあまえている。

 樹齢100年を超える実家の八重桜は、母が幼い頃から家にあったという。その苔むした木肌には、ユキノシタが生えていた。今年も元気にしているだろうか。

 私は幼い頃から、縁側のその八重桜を見るのが大好きだった。散りゆく花びらを見て、このままとってはおけないかと考えたものだ。あるときポプリにしようと思いたち、ブルーシートに広げて採集を試みたものの、茶色く萎(しお)れてしまう桜を見て、ずいぶんと悲しんだりもした。

 その後、桜の塩漬けのつくり方を知ってからは、父に懇願してつくってもらうようになった。毎春の帰省では、あまえることも親孝行の一環と、桜の塩漬けを楽しみにしながら出かけるのが通例となっている。

 しかし、今年は残念ながらステイホームで帰省できず、これはいよいよ自分でつくるときがきたかなと、はじめてひとりでつくってみた。お花の好きな私に、と友人がとどけてくれた八重桜で――。

 意外と上手にできたな、と思ったその日、父から桜の塩漬けがとどいた。持病があり、外出もはばかる父がわざわざ送ってくれたのかと、今年の桜は格別な思いでいただいた。

 庭に静かに佇む八重桜に想いを馳せると、桜の香りが、遠い実家の庭にすーっと心をつれていってくれた。


(千葉県・会社員・中西章子・48歳)


#中西章子

#創刊第4号

#家族

#故郷

#自然

#季節

#花

#ステイホーム

#つながり


7回の閲覧0件のコメント

最新記事

すべて表示

コロナ禍でスポーツの初心を思う

今、コロナ禍が、スポーツ環境に大きな影響を及ぼしている。 東京オリンピック・パラリンピックの延期、インターハイ(全国高等学校総合体育大会)や夏の甲子園(全国高等学校野球選手権大会)の中止など、長い歴史のある大会さえも、開催できない状況となっている。 とくにこのコロナ禍の中で引退を迎える選手などは、さぞつらい思いでいることだろう。 私が6年前、アメリカのアトランタで行われた交流大会でエールを送った東