- グッドニュース新聞編集部
33人分のお参り
去年の3月、中学三年生の孫が高校合格の報告にきてくれたときの話です。
「おばあちゃん、お多賀さん(多賀大社)にお礼参りにつれていってほしい」と頼まれました。その日は、雪がちらつく冷え込んだ日だったこともあり、「今日は寒いから、もっとお天気の良い日におばあちゃんがお参りしてきてあげるよ」と言いました。ところが孫は、「今日、自分で行きたいんだ」と頑なです。願いを断りきれず、しかたなく多賀大社に行くことになりました。
向かう途中、孫は自分の財布から数枚のお札を取りだし、封筒にしまっていました。「それをどうするの?」と問うと、「僕がクラスでいちばん早く合格が決まった。ほかの人はまだ決まっていないから、クラスメイト33人分の合格祈願をしたい。ひとり100円ずつのお賽銭でみんなの合格をお願いするんだ」と言いました。
まだお小遣いの少ない中学生が、クラスメイトのためと思い、3300円も使おうとしていました。今日、お参りに行きたかった理由はこれだったのです。あのとき、寒いからと断っていたら、この子の思いを無視するところでした。
33人分のお参りをした帰り道、「このこと、クラスの子たちは知っているの?」と聞いてみました。
「知らないよ。僕が勝手にやってるんだもん」
雪雲のすきまから見えた太陽の光と、孫の屈託のない笑顔は、私にとってかけがえのない思い出です。
(滋賀県・至楽庵)