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  • グッドニュース新聞編集部

編集後記

 それにしても、「世に晒すものを書く」ということは大変なことである。私は、これまでに約20作のミュージカルの脚本・作詞・作曲を手がけているが、新作となると、前に使った設定やアイデアが被っているのではないか。前の曲とメロディーが似てはいないか。自分自身は進化しているのか。期日に間に合うのか。等々、さまざまなものが覆いかぶさり、孤立し、食欲もなくなり、睡眠不足になる。

 そのため、かなりの不健康状態が続く。自分の才能のなさが嫌になり、「もうダメだ」と何度も思う。挙句の果てに、自分が書かなくても良い理由を探しはじめたりもする。最悪だ。よくパソコンに例えるのだが、フリーズ状態で、人として何も機能しない。逃げだしたくなるのである。

 本年11月4日の朝日新聞コラム『天声人語』は、「執筆にいきづまり失踪を考えたことは一度や二度ではない」という出だしで、先頃69歳で生涯を閉じた漫画家・吾妻ひでおさんのことが書かれていた。吾妻さんは、原稿が間に合わず失踪してしまう過去を持つが、後にそのときの体験を「失踪日記」という漫画にして復活を果たした、という内容だった。

 私はこの記事を読んで、笑っちゃった。「みんなそうなんだ。」と。肩の力が抜けて楽になり、頭の回路も流れだした。パソコンが再起動したのだ。本来書くという自己表現は、とても楽しいこと。

 チャップリンの言葉に、「人生はクローズアップで見れば悲劇。だが、ロングショットで見れば喜劇」という言葉がある。己の事情に苛まれ、先へ進めない苦しい状態は、私の悲劇。しかし、視点を変えて客観的にそれを表現すれば、笑って楽しんでいただける。世界がひっくり返るような感覚である。

 悪いニュースの向こう側にも、きっと素敵なニュースが隠れている。皆さまからのグッドニュース、お待ちしています。


(本紙編集長・野村幸廣・54歳)


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