
グッドニュース新聞編集部
編集後記
当たり前だったことが、いかに尊く、素敵なことだったかを思い知らされる昨今。だれかと話す、握手する、食事する、ともに汗を流す、旅をする、酒を酌み交わす……。未知の感染症を防ぐには、何気なく行われていた日常の多くを拒むよりほかはなさそうだ。
もうすぐ五月も終わるというのに、娘はこの春から進学した高校へ、まだ二日しか行けていない。一日目は簡略化された入学式、二日目はオリエンテーション。皆がマスクをしたままなので、クラスメイトの顔もわからない。
娘のことひとつとっても、この異常事態。世界のニュースからも、新型コロナウイルス感染症は、地球規模の災害に瀕していると実感する。ここは気長に待つしかない……。そう思いながらも、迫り来るのは明日の生活。何としても大切な人を守りたい、と頑張っているのが世界中の人々の現況だろう。
東員町には毎年、初夏に「アオバズク」という渡り鳥がやってくる。前号で紹介した猪那部(いなべ)神社の境内の杜、クロガネモチの大木の洞に営巣する。
アオバズクはフクロウの仲間で、三十センチ足らずの大きさ。茶と白の縦縞の羽毛と、まんまる目の強膜(人間でいう白目部分)がきれいな黄色なのが特徴的で、じつに可愛いフクロウだ。
初夏に東南アジアから飛来し、日本や朝鮮半島などで繁殖ののち、秋に家族で帰っていく。近年、人里近い森林の伐採や、越冬地での開発の影響で、アオバズクの生息数はかなり少なくなっているらしい。それでも毎年、東員に来てくれることは町の誇りであり、「神の使い」とも呼ばれている。
そして青葉の季節、今年も遠い遠い異国の地からやってきてくれた、つがいのアオバズク。クロガネモチの木から少し離れた、楠の大木に舞い降りたのだ。
去年のつがいのオスは、子育ての最中にカラスかネコかに襲われてしまい、絶命したらしい。必死で家族を守ろうとして、食いちぎられた片足だけが、境内に残されていたそうな。それでもメスは子育てをなしとげ、南へとわたった。
そしてまた今年、つがいで飛来したアオバズク。このメスが去年のお母さんかは不明だが、きっと、今回のお父さんも命をかけて新しい家族を守るに違いない。私ももっと頑張らなければ、と、この小さな「神の使い」から教えられた気がする。
みなさまの大切な方々がご無事であることを心よりお祈りしています。このきびしい現況にも、きっとグッドなニュースはあふれています。素敵なニュースを、ここ東員町でお待ちしています。
(本紙編集長・野村幸廣・55歳)
