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言い訳

 ある小学生の男児が「言い訳だ!」と、体操教室で指導をしている私に言い放ちました。運動をするにはいささか小さめな体育教室の片隅でのことです。

「言い訳とは?」と聞きました。

「そうやってさ、あとからいろいろ言うのは『言い訳』なんだよ。学校の先生が言ってたもん」。彼は、知らないの? とでも言いたげに勝ち誇った顔をしていました。大人よりも知識があるんだぞ、とうれしかったのでしょう。「言い訳ってダメなんだよ。『言い訳するくらいなら反省しろ』って、先生が言ってた!」。

 そこで私は、「たしかに、反省することは大切だね」と返しました。「でもね、言い訳もときには大切なの」。

 そう告げると、彼は「ええっ、ウソ!」と目をまるくしました。

 さてさて――何を話そうかと思いつつ、私は亡き恩師からいただいた言葉を紡ぐことにしました。「どうして自分ができなかったかがわからないと、どうすればもっと良くなるのか、わからないでしょう」と言って聞かせると、男の子は怪訝そうな顔をしました。

「たとえば、空中逆上がりができないときに、できるようにするにはどうしたらいい?」との問いに、「練習する!」という返事。「45点かな」と答えると、彼は「えええっー」と、私の採点に不満をこぼしました。「練習するにしても、『どうしてできないんだろう』ということを考えなゃダメ。つまり『理由』だね」。

 世の中には不思議なことに、この「どうして」について話すと、「言い訳するな」と怒る人がいます。けれども、私の恩師は言いました。「その言葉に屈してはならない。前に進むためには、自分で『理由』を考えなければ。そして、自分の考えを伝えなければ」。

 恩師からもらったその言葉を、誇るようにして私は彼に伝えました。「うーん、たしかにそうかも」。彼の眉間には薄っすらとシワが浮かんでいました。子どもながらに、必死に考えたのでしょう。私には、それがうれしく感じられました。

 やがて、男の子が不思議そうに口を開きました。「じゃあなんで、逆上がりできなかったの?」「えっ、それはちょっとお腹が痛くて」「言い訳じゃん!」。

 子どもたちのケラケラと笑う声が教室に響きました。気がつくと、いつのまにか私の口元もゆるんでいました。そんなとき、「笑顔が移ったみたいだ」と私はいつもそう思うのです。


(神奈川県・フリーライター・ちくわのアンコ・22歳)


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